
万が一に備え、生命保険を活用して退職金準備をした方がよいのでしょうか。
私は会社経営者です。先日、金融機関から法人を契約者として、生命保険を活用した退職金準備を提案されました。主に以下の観点でメリットがあると説明を受けています。
- 生前退職金の原資を計画的に準備できる
- 万が一の場合は、法人に死亡保険金が支払われる。受け取った死亡保険金を原資に、家族に対して死亡退職金を支払うことができる。その場合、死亡退職金の非課税枠が適用でき、相続対策としても有効
現状、法人で加入している保険はありません。退職金の準備もこれまでできていなかったため、万が一の際に法人から家族に死亡退職金を支払うのは難しい状況です。現在の状況を踏まえ、下記について教えてください。
- 死亡退職金の非課税枠はどれくらいあるのでしょうか?
(※)法定相続人は妻、子3人(3名とも実子)の計4人 - 今後、預貯金で積立をしようと考えていましたが、万が一のことを考えると生命保険も活用した方がよいのでしょうか?
今回のご相談のように法定相続人が4人の場合、死亡退職金の非課税限度額は2,000万円となります。
また、預貯金で積立を行った場合、亡くなった時期によっては支払原資に間に合わず、十分な資金を確保することができないことも考えられます。いつの時点でもまとまった資金が確保できる、生命保険を活用することも視野に入れるとよいでしょう。
死亡退職金の非課税枠について、国税庁ホームページに以下の記載があります。
相続人が受け取った退職手当金等は、その全額が相続税の対象となるわけではありません。
すべての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下のときは課税されません。
非課税限度額は、次の式により計算した額です。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
なお、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。
(注1)法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
(注2)法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。
法定相続人の数に含める養子の数の制限については、「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」をご参照ください。
出典:国税庁HP「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」
今回、相談者様の法定相続人は4人ということですので、死亡退職金の非課税限度額は2,000万円となります。

預貯金で積立を行った場合、積立を開始して間もなく相談者様が亡くなってしまうと、その時点での積立額が退職金の支払原資となり、十分な資金を確保することができません。 一方、生命保険で退職金原資を準備する場合は、もし相談者様が急死されても法人で死亡保険金を受け取れるため、死亡退職金の支払原資を確保することができます。
現状、法人では生命保険に未加入で、退職金の準備もこれからということですので、万が一の際にまとまった資金が確保できる生命保険を活用することは有効と考えられます。
また、法人で受け取った死亡保険金は死亡退職金の支払いだけでなく、その後の会社の運転資金や会社を清算することとなった場合の支払いに充当することも可能です。
ただし、保険料を支払い続けるための資金繰りや、退職金規程の整備など留意すべき点はありますのでご注意ください。
生命保険を活用した退職金の準備に関してのご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
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