
所有地と隣地との間に設置されたブロック塀の取り扱いについて教えてください。
宅地開発された住宅街にある土地を相続しましたが、自宅から遠く活用の予定もないため、売却しようと考えています。所有地と隣地との間に老朽化したブロック塀が設置されていますが、現地に境界標はなく、境界や測量等に関する資料の確認もできないため、隣地境界線が何処か分かりません。また、隣地所有者に確認しましたがブロック塀について解決できませんでした。
ブロック塀にはひび割れがあり、素人目にも地震等によって倒壊の危険性があると思われます。私自身の判断で補修工事や撤去等を実施してもよいのでしょうか。
ブロック塀が誰の所有物かによって対応が異なります。ご自身で判断される前に、まずは土地家屋調査士等の専門家に確定測量を依頼し、隣地境界線を特定されることをお勧めします。その後の対応については、詳細解説をご確認ください。

ブロック塀の所有者はブロック塀を設置した者です。所有者が分からない場合は、原則として、ブロック塀が設置してある土地の所有者になります。今回のように、隣地境界線が分からないのであれば、まず確定測量で隣地境界線を確定させたうえで、所有者を特定することが最善と考えられます。
隣地所有者および道路や水路等の公共用地所有者(役所職員等)との立ち合いを経て、土地の境界全部を確定させることを、確定測量といいます。この確定測量によって作成された測量図のことを、確定測量図といいます。
ブロック塀の位置によって、以下の(1)〜(3)に分類した対応を取ることになりますが、(1)(2)に設置されている場合は、何処が危険なのか点検チェック表(※)等を基に確認のうえ、抵触する項目があれば、速やかに専門家に相談することをお勧めします。
(※)国土交通省「ブロック塀等の点検のチェックポイント」
また、ブロック塀等の工作物が起因して人に怪我等をさせた場合は、工作物の所有者(占有者)が賠償責任を負うため、常日頃から適切な維持管理が求められています。
- ブロック塀の所有権は相談者様に帰属します。相談者様に補修工事や撤去等を実施する義務はありませんが、所有者には工作物の賠償責任が伴いますので、これらを勘案し対応する必要があります。
- 土地の売却が目的となるため、補修工事や撤去等については、買主の意向を汲んだ対応がよいと思われます。ただし、現状のまま売却しようとする場合は、老朽化等に伴い指摘される危険項目を売買契約書や重要事項説明書に記載し、買主に説明する必要があります。
- ブロック塀の所有権は、相談者様と隣地所有者の共有であると推定されます(民法第229条)。ただし、あくまで推定であり、後日、設置者が特定されたときは、その者が所有者となります。今回は予め隣地所有者に確認していますので、ブロック塀は共有であると考えられます。
- 倒壊の危険があるブロック塀の撤去や、新たに隣地境界線上にブロックやフェンス等を設置する場合は、共有物の変更行為にあたることから、隣地所有者の同意を得る必要があります(民法第251条)。ただし、補修工事は、保存行為にあたると考えられるため、相談者様は、保存行為として隣地所有者の同意を得ることなく実施できると考えられます(民法第252条)。
なお、補修工事を実施する際は、ブロック塀が共有であることを踏まえ、隣地所有者に対し工事内容等を事前に説明されることをお勧めします。 - 売却予定の土地の境界線上に共有のブロック塀が存在していることは、買主にとって購入の検討をする上で重要な事項となります。よって、売買契約締結前に、ブロック塀の存在について買主に説明する必要があり、また、売買価格等にマイナスの影響を及ぼす可能性もあるため、買主の意向を確認した上で、隣地所有者と協議することが求められます。
- 相談者様は、補修工事や撤去等を隣地所有者へ依頼できるにとどまります。依頼した結果、対応してもらえない場合は、法的な手続きを取ることも可能ですが、隣地所有者と良好な関係を保つためにも、売買契約書や重要事項説明書に現在の状況を記載し、買主に説明する程度にとどめておくことが有用な場合もあります。この場合、境界立会い等を通じて、隣地所有者には老朽化したブロック塀の所有者であることを認識してもらうことが必要です。
不動産の売買は、売買価格の決定の他に隣地との境界確認や当該地への越境物の有無の確認、さらには今回のように共有物の存在等の問題がいくつも絡み合っており、これら個々の対処が必要となります。よって、売却の検討をした段階で、まず不動産売買の専門家である不動産仲介会社に相談されるのがよいと思われます。
<参考>
民法第229条、251条、252条
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