
今年中に暦年課税による贈与を行った場合に、110万円の基礎控除は適用できますか?
巷では暦年課税が廃止されるなどの噂がありますが、今後の改正により例えば110万円の基礎控除が廃止された場合に、令和4年中の贈与についても110万円の基礎控除が遡って認められなくなる、ということにはなりませんか?
今後贈与税について何らかの改正があったとして、その改正により既に行った贈与に係る贈与税にまで影響を及ぼすことは考えにくいと思われます。ただし、現行制度における相続税の計算上、生前贈与に関する持ち戻し期間は3年となっていますが、今後の改正によっては3年を超える場合も想定されます。その点はご留意ください。
贈与税とは、原則、個人から財産をもらったときにかかる税金のことをいいます。
個人から財産を直接もらう他、例えば個人から借りていたお金の返済を免除してもらった場合のいわゆる「経済的利益」に対しても、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。
一方で、例えば生活費や教育費に充てるために通常必要と認められる親からの仕送りなど、財産をもらったとしても贈与税がかからない場合もあります。
贈与税は
- (1)暦年課税
- (2)相続時精算課税
の2つの計算方法があり、(2)は一定の要件に該当する場合に自ら選択することで適用することができます。
今回は暦年課税を取り上げてご相談いただいていますので、以下では暦年課税の概要を説明します。
暦年課税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間のうちにもらった(贈与を受けた)財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残額に対して贈与税を計算する方式です。
この場合の贈与税率については、贈与者(あげた人)と受贈者(もらった人)との続柄や受贈者の年齢に応じて、適用する税率が異なります。
9月16日の第16回税制調査会において、相続税・贈与税に関する専門家会合が設置されることが明らかとなり、この専門家会合における議論の方向性に関して、中里会長から「この相続税・贈与税に関しましては、一部には、近々、暦年課税が廃止されるのではないか、110万円の基礎控除が使えなくなるのではないか、などといった見方・御懸念があるようですが、そういった議論を行うのではなく、(中略)理論的・実務的な視点も踏まえて御議論いただければと(略)」との発言がありました。
実際にどう改正されるのか執筆日現在明らかではありませんが、現行法での贈与税の計算について、税制改正により遡って適用不可となるケースは考えにくいものと思われます。
ただし、現行制度における相続税の計算上、生前贈与に関する持ち戻し期間(いわゆる「生前贈与加算」)は相続開始時点から3年となっていますが、今後の改正によっては3年を超える場合も想定されます。贈与税の計算自体の改正ではありませんが、将来の相続税における対策には影響が生じるかもしれません。その点はご留意ください。
<参考>
国税庁HP「No.4402 贈与税がかかる場合」
内閣府HP「第16回 税制調査会(2022年9月16日)議事録 (PDF形式:453KB) 」
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